面会者と生花

面会者と生花

病院に見舞いに行くと、「生花や植物の持ち込みはご遠慮ください」などと掲示されていることがあります。せっかく、入院患者の心の安らぎのために持ってきた花や植物を病室に置くことができないのはとても残念です。

いまから、20年前にはこのようなことはありませんでした。どの病室にも花や植物が置かれて、入院患者や面会者はそれを見ながら楽しんでいました。どうして、このようなことになったのでしょうか?そして、持ち込んではいけない理由は何なのでしょうか?

昔は白血病やリンパ腫といった血液がんの患者が入院している病棟で生花や植物を持ち込まないという方針の病院がありました。すべての病院ではなく、持ち込み禁止の病院もあれば持ち込み可の病院もあったのです。ところが、2000年に米国疾病管理予防センターが骨髄移植のガイドラインを公開し、そこには「生花や植物が患者に感染症を引き起こしたという事例はないけれども、専門家は持ち込まないことを支持している」と記載されたのです。そして、その目的はアスペルギルスという真菌(いわゆるカビ)を予防することだったのです。

アスペルギルスは日常生活のなかで常に遭遇する病原体です。道路工事や建築現場では土埃が立っているのですが、そのようなところにはアスペルギルスも浮遊しているのです。免疫が正常な健康な人々がアスペルギルスを肺に吸い込んでも何もおこりません。しかし、骨髄移植のように抵抗力が極端に低下した人が吸い込むと重篤な肺炎を合併することがあります。

骨髄移植の患者以外で重篤なアスペルギルス肺炎となることは殆どありません。そのため、骨髄移植の患者が入院する無菌室といわれる病室には生花や植物を持ち込まないのがよいと思いますが、がん病棟を含めた他の病棟には持ち込んでも構わないと思います。2005年、日本感染症学会はホームページのQ&Aで「移植患者や重症エイズ患者の病棟以外であれば制限は不要です」としています。

このようなことから、最近は多くの病院が生花や植物の病院内への持ち込みを緩和してきています。そのため、生花や植物を持ち込んでよいかどうかを再度確認することをお勧めします。病院が許可しているにもかかわらず、持ち込むことが心配ならば、生花や植物に触れた場合には手洗いをするようすればよいのです。手洗いは様々な感染症を予防することができるので常日頃から手洗いするようにします。