食中毒

食中毒

気温が高くなり始め、湿度も高くなる梅雨時には「食中毒に注意しましょう!」といわれます。高温多湿は病原体を増殖させる環境となっているからです。食中毒といっても1つの疾患ではありません。サルモネラ菌やノロウイルスなど様々な病原体が引き起こしている感染症です。

まず、食中毒には感染型と毒素型があることを知ってください。感染型食中毒というのは病原体が腸管のなかで増殖して十分な病原体の数に到達してから、症状がみられる食中毒です。増殖する時間が必要なので、潜伏期間(感染してから症状がみられるまでの時間)は8~24時間程度となります。これにはサルモネラ菌や病原大腸菌などがあります。サルモネラ菌による食中毒は鶏卵の汚染によって引き起こされることが多いのですが、自宅で飼っている亀などの爬虫類からの感染もあります。比較的軽症なことが殆どですが、小児や高齢者では血液中に病原体が流れる菌血症という合併症を引き起こし、死亡することがあります。病原大腸菌ではO157(「オー157」と呼びます)が有名ですが、O26、O111、O128、O145などもあります。「O(「オー」)+数字」は大腸菌の表面の違いを示しています。この病原体による感染症では、重症になると溶血性尿毒症症候群を引き起こし死亡することがあります。溶血性尿毒症症候群では赤血球が血管内で破壊されたり、腎臓が急に悪くなったりします。ノロウイルスによる食中毒も感染型です。ノロウイルスは感染力が強いので、ごく少数のウイルスであっても感染症を引き起こすことができます。突然の噴水のような嘔吐が特徴ですが、下痢も多くみられ、発熱する人もいます。高齢者が感染すると脱水となったり、吐物によって窒息して死亡することがあります。

毒素型食中毒では腸管内で菌が増殖するのではなく、既に菌が産生していた毒素が摂取され、それが腸管で吸収されることで症状を引き起こします。病原体が増殖する時間の必要はないので、潜伏期は短く、30分~8時間(通常3時間程度)です。これには、ボツリヌス菌や黄色ブドウ球菌などがあります。ボツリヌス菌は猛毒の神経毒を産生するので、食中毒の症状(吐き気、嘔吐、発熱など)に加え、神経症状が現れるのが特徴です。重症例では呼吸麻痺により死亡することがあるので注意を要します。一方、黄色ブドウ球菌による食中毒では悪心や嘔吐がみられますが、経過は良好で、1~3日で回復します。

食中毒になると病院や診療所に受診することになりますが、この時には「何を食べたか?」「いつ食べたか?」「一緒に食べた人に症状がみられているか?」「神経症状や意識障害があるか?」などを伝えることが大切です。それによって原因菌が推定できるからです。もちろん、「抵抗力が低下しているか否か?」も重要な情報です。抵抗力が低下していると重症化する危険性が高くなるからです。