中東呼吸器症候群

中東呼吸器症候群

中東呼吸器症候群(MERS)が韓国に入り込み、死亡者も発生しました。また、多くの人々が隔離されています。ここではMERSについて解説します。

原因となる病原体はMERSコロナウイルスです。「コロナウイルス」はウイルス表面の王冠様のスパイクから名付けられた名称です。太陽のコロナのような外観が特徴です。コロナウイルスは1種類のウイルスではなく、数多くの種類のウイルスが含まれています。このウイルスは世界中のコウモリが持っていますが、トリ、ネコ、イヌ、ブタ、ネズミ、ウマ、クジラ、ヒトといった動物にもみられます。そして、これらの動物において呼吸器、腸管、肝臓、神経の感染症を様々な程度(軽症~重症)で引き起こしています。これらのコロナウイルスのなかで、今回問題となっているのがMERSコロナウイルスです。

中東呼吸器症候群はサウジアラビアなどの中東地域で流行しており、既に世界で1154人の感染者が確認され、434人が死亡しています。(2015年6月1日現在)実際にはもっと多くの人々が感染していると推測されています。韓国での感染拡大は中東地域に4月18日から旅行していた68歳男性が発端となっています。この男性は5月4日に韓国の仁川国際空港に帰国しましたが、このときには何ら症状はみられませんでした。しかし、5月11日にMERSを発症したのです。それ以降、韓国でMERSが拡大し、現在は封じ込めの努力がなされています。

MERSの症状は発熱、悪寒、頭痛、乾いた咳、呼吸困難、筋肉痛で始まります。その他には咽頭痛や鼻感冒、吐き気と嘔吐、眩暈、喀痰、下痢、腹痛がみられることもあります。重症になると呼吸不全、敗血症ショック、多臓器不全となり、死亡することもあります。死亡率は35%程度です。殆どの患者は成人であり、男性に多くみられる傾向があります。入院を必要とする患者には慢性の合併症があることが殆どです。

潜伏期間は約5日です。(最短で2日、最長で14日)病状は急速に増悪し、発症してから入院するまでの日数は約4日です。重症患者では、発症してから約5日で集中治療室に入院します。死亡することもありますが、この場合には発症から約12日で死亡しています。

コロナウイルスの感染経路は「咳やくしゃみによる空気を介したヒトからヒトへの伝播」「接触や握手などの濃厚なヒトとの接触による伝播」「ウイルスに汚染した物品や表面に触れてから口、鼻、目に触ることによる伝播」と推定されています。そのため、感染予防には普段からの手洗いが大変重要です。また、咳や発熱のある人は咳エチケットをすることが大切です。咳エチケットでは咳やくしゃみをするときにはティッシュなどで口や鼻を覆い、そして手洗いします。アルコール手指消毒薬の使用も有用です。
MERSは感染者を看病したり診療したりして感染することが多く、通勤や職場といった健康な人々が日常的に活動しているところでの感染は殆どありません。院内感染が問題となる感染症と言えます。