氷

氷

喫茶店やレストランに入ると、ウエイトレスがガラスコップに入った水を持ってきてくれます。殆どの場合、コップの中に氷が浮かんでいます。夏は外気の暑さで脱水状態となり、体も火照っているので、氷が入った水はとても有難く飲んでいます。

しかし、氷には気を付けなければならないことがあることを知っていて下さい。多くの人々が「氷は0℃以下になっているので、病原体が増殖できない環境だから安心である」と思いこんでいるからです。確かに、0℃以下の温度では病原体は増殖できません。しかし、病原体で汚染している水で作った氷は汚染しています。汚染していない水で作られた氷であっても管理が悪かったり、製氷機からコップに移動するときの取扱いが悪かったりすると病原体で汚染するのです。

数年前の夏、かつ丼やうどんを食べることができる和食店に入ったことがあります。そのとき、店の奥にあるテーブルに案内されました。そこは、レジの少し裏にありました。昼食の時間なので、店はとても込み入っていて店員は大忙しでした。食事を終えた客が料金を払う時、店員はレジからお釣りを出してきて、お客に手渡ししていました。その後、別の客が入店してきたので、水を用意しはじめました。レジの横に製氷機があり、そこから素手で氷を取り出し、コップにいれ、水を注いで客のテーブルにもっていったのです。コインや紙幣は様々な人が触れているので、汚れています。それに触れた直後に手洗いせずに、氷を素手でつかむという行為は清潔ではありません。安全に作った氷であっても取扱いに問題があれば汚染してしまうのです。

それでは、みなさんは自宅ではどのように氷を作っていますか?安全に作成・管理しているのでしょうか?タンクに水を入れれば自動的に氷を作ってくれる冷蔵庫もあれば、トレイに水をいれて氷を作っている人もいます。まず、自動製氷機を使用している人はタンクの内側や氷の貯蔵庫をどの程度の頻度で洗浄剤を用いて洗っているのでしょうか?ときどき、冷蔵庫を買ってから一度も洗ったことがない人がいるのです。これは、氷は温度が低いから病原体が増殖できないので安全であるという誤った認識をもっているからと思います。それでは、トレイで氷を作っている人ではどうでしょう。トレイに水を入れるときには表面を水でザーと洗い流すので、トレイの表面は比較的清潔です。しかし、あまり氷を使用しない家庭の冷蔵庫には数か月前に作った氷がそのまま冷凍されていることがあります。コップに水を入れて冷蔵庫にいれ、それを数か月後に飲むことは誰もしないでしょう。しかし、数か月前に作った氷は使用してしまうのです。やはり、冷たい氷は安全であると思いこんでいるからでしょう。

よく、東南アジアなどに旅行に行く人は氷に気を付けましょうと啓発されることがありますが、これは正しいことと思います。現地の人々の手指に赤痢菌やコレラ菌などが付着していて、それが氷を汚染していることがあるからです。日本においては、そのような病原体は流行していませんので、抵抗力に問題のない人であれば、多少汚染した氷であっても使用してもよいでしょう。しかし、抗がん治療を受けている方のような抵抗力の低下している人では、安全な氷を使用してほしいものです。