肝臓病と海水

肝臓病と海水

海岸に行くと、多くの人々が釣りをしているのを見かけます。船に乗って釣りをしている人もいます。夏になると海水浴に出かけ、子どもと一緒に浮き輪などで遊んでいる人も数多いと思います。このようなレジャーは人生を楽しむ上でとても大切なことです。しかし、肝硬変や慢性肝炎のような肝臓に重大な問題がある人やHIV感染などで免疫が低下している人は海水には接触しないようにしてほしいと思います。ビブリオ・バルニフィカスという病原体による感染症が問題となることがあるからです。

この病原体は海水のなかに住んでいます。健康な人々では何ら問題を引き起こしません。しかし、肝臓が悪い人や抵抗力が低下している人では重篤な感染症を合併し、敗血症をおこして短期間で死亡してしまうことがあるのです。

2005年8月末、米国南東部をハリケーン・カトリーナが襲いました。このとき、ニューオリンズ市の殆どが洪水に浸かったため、人々は海水のなかを歩きながら歩行することになりました。その結果、肝臓が悪い人や抵抗力の低下している人も海水につかることになり、ビブリオ・バルニフィカス感染症となり何人も死亡したのです。この感染症がどのようなものかを知っていただくために経過を解説します。

[男性(60歳)]
アルコール中毒かつ高血圧を持病に持っている男性がカトリーナが来襲した後、洪水の中を3日間歩くことになりました。そのとき、両足首を怪我し、下痢したため救急外来に入院しました。そして、9月3日に死亡したのです。血液培養にてビブリオ・バルニフィカスが検出されました。
[女性(49歳)]
C型肝炎を持病に持っている女性が海水に浸かってしまいました。その後、左下肢の水疱、敗血症ショックにて重篤な状態となりました。血液培養でビブリオ・バルニフィカスが検出されました。

このようなことから、肝臓疾患や免疫不全状態の人は皮膚の傷部分を海水に触れないようにしてビブリオ・バルニフィカス感染症を防ぐ必要があるのです。この細菌は乾燥によってすぐに死滅するので、水が引いて乾燥した地域では心配ありません。

海水に浸かることだけが危険というわけではありません。刺身のような生の海産物を食べることも感染の原因になることがあります。肝硬変と間質性肺炎を持病にもっている人が海で魚を釣り、それを刺身にして食べた結果、ビブリオ・バルニフィカス感染症となり、死亡したという事例もあるからです。

肝臓疾患や免疫不全のある人は海水に汚染したものを食べたり、海水に身体が曝露したりすることを避けることをお勧めします。