鼻うがい

鼻うがい

多くの人々が鼻うがいをしています。人知れず、こっそりと鼻うがいをしている人もいれば、鼻うがいをしていることを躊躇なく、公言している人もいます。鼻うがいの目的は、鼻炎対策であったり、インフルエンザ対策であったり、副鼻腔炎(蓄膿症)対策であったり、様々です。そのテクニックも人によって異なりますが、少なくとも安全な鼻うがいをしてほしいと思います。

最も避けていただきたいのは水道水を少し温めて、塩をいれて鼻うがいに使用するというものです。非結核性抗酸菌という細菌による慢性副鼻腔炎が引き起こされる可能性があるからです。非結核性抗酸菌は土や水など環境の至る所に生息している細菌で、水道水にも含まれていることがあります。米国の研究者の調査によると、非結核性抗酸菌が副鼻腔の培養にて得られた33人の成人患者を調査したところ、31人(94%)が鼻洗浄をしており、そのうち、26人が水道水を用いていたのです。その結果、「水道水による鼻うがい」と「非結核性抗酸菌による慢性副鼻腔炎」の関連が疑われました。非結核性抗酸菌による感染症は数年から10年以上かけて、ゆっくりと進行します。この病原体は結核菌とは異なり人から人には伝播しないので、非結核性抗酸菌感染症の患者を結核患者のように隔離する必要はありません。

水道水による鼻うがいで問題となるのは非結核性抗酸菌のみではありません。水道水を用いて鼻うがいしたところ、ネグレリア・フォーレリというアメーバが脳に入り込み髄膜脳炎を引き起こして2人死亡したという報告があります。ネグレリア・フォーレリは別名、脳食いアメーバと呼ばれている病原体ですが、この病原体が水道水に潜んでいて、その水道水を用いて鼻うがいした人の鼻腔から感染し、脳に侵入したのです。このアメーバは鼻から侵入する病原体であり、日本でも死亡例が報告されています。

日本においては水道水が口から食道を経由して胃に入り込むのは日常的なことであり、何ら問題ありません。水道水を飲んでも胃のなかの胃酸が病原体のほとんどを殺菌するので安全だからです。一方、鼻腔は呼吸をするための空気が出入りする通路であり、水が出入りするような構造にはなっていません。むしろ、鼻腔は非結核抗酸菌やアメーバなどの病原体が生存できる良好な環境となりうるのです。そのようなことから、鼻うがいをするときには滅菌水や一度沸騰した湯冷ましを用いることが適切といえます。鼻うがい用の製品も販売されているので、それを用いるのもよいかもしれません。