震災と感染症

震災と感染症

東日本大震災から5年となります。多くの方々が津波や地震の犠牲となりました。そのような大震災が再び、日本のどこかを襲ってくる可能性は常に指摘されています。免震工事や津波対策を講じておくのは大変重要ですが、震災後の感染症に対する準備も大切です。大震災が発生した場合にはどのような感染症が想定されるのでしょうか?そして、どのような感染対策が必要なのでしょうか?

災害地にはガラス片のような鋭利なものがいたるところに飛散しています。その結果、怪我をすることがあります。そのような鋭利物は土や泥で汚染しているので、破傷風菌に感染する危険性が出てきます。破傷風ワクチンが適切に接種されている人では破傷風は問題とはなりませんが、未接種の人が怪我をしたりすると、破傷風に罹患する危険性があるのです。破傷風は重篤な感染症であり、全身痙攣などによって呼吸ができなくなり、人工呼吸器が必要なことがあります。怪我をして受診するときには破傷風ワクチンの接種歴を必ず伝えるようにしましょう。いつ接種したか忘れてしまっても心配ありません。その場合は接種時期が不明であることを医師に伝えればよろしいのです。

震災地域では水道が利用できなくなることがあります。その結果、感染予防に最も大切な手洗いが不十分になってしまいます。手洗いができなくなると、手を介して伝播する感染症(食中毒、ノロウイルス、ロタウイルスなど)が流行する危険性がでてきます。水道が利用できないのであれば、アルコール手指消毒薬を用いるようにします。トイレの後、食事前には必ず手洗いや手指消毒をしてください。

震災で家が破壊された方々は避難所に避難することになります。多くは学校の体育館のような施設に避難することになりますが、そこには多くの人々が滞在することになります。すなわち、多数の人々が空間および空気を何週間も何ヶ月間も共有するのです。その結果、飛沫感染や空気感染する感染症(麻疹、インフルエンザなど)の流行がみられることがあります。発熱や咳のある人は咳エチケットが必要です。また、そのような人を看病する人もマスクを装着して感染しないようにします。多数の人々が長期間、一緒に生活するのですから、肺炎球菌による肺炎の集団感染が発生することがあります。肺炎では発熱や咳がみられることが多いのですが、高齢者では発熱もなく、咳もみられないことがあります。単なる食欲不振のみのこともあるのです。そのため、高齢者が食事を取らなくなってきた場合には発熱がなくても、肺炎を疑って受診することが大切です。平時に高齢者や幼児に肺炎球菌ワクチンを接種しておくことも重要です。