百日咳

百日咳

百日咳は百日咳菌による感染症です。極めて感染力が強く、乳幼児においては重症疾患を引き起こすことがあります。最近は、ワクチンによって罹患率および死亡率が劇的に減少しています。しかし、過去にワクチンを接種して免疫を獲得していても、年月の経過とともに免疫が低下して再び、百日咳菌に感染してしまうことがあります。成人が百日咳に罹患すると、ワクチン未接種または免疫が不十分な乳幼児への感染源になることがあります。「百日咳は子供の病気」というのは昔の話であり、成人も百日咳に感染することを知っておいてください。

小児では百日咳は風邪のような症状(鼻汁、鼻閉、くしゃみ、軽い咳、発熱)で始まり、1~2週間後には激しい咳がみられるようになります。「ゼーゼーした咳」がみられたり、咳き込んだ後に嘔吐したり、血液の中の酸素が低下して顔が青ざめたり、呼吸が止まってしまうこともあります。何回も何回も、肺から空気を絞り出すまで咳をして、笛を吹いた様な音を伴って息を吸い込むといった激しい咳が数ヶ月間持続することもあります。幼児では悪化することが多く、10人に1人は肺炎となり、50人に1人は痙攣となり、250人に1人は脳障害を合併します。死亡することもあります。

一方、成人では免疫が十分にあれば感染することはないのですが、ワクチンの接種によって獲得していた免疫が年月の経過とともに低下したところで百日咳の患者に濃厚接触すると感染することがあります。この場合、不十分な免疫ゆえに、典型的な百日咳の経過を辿らず、百日咳らしからぬ症状のことが多いことを知っておいてください。この場合の症状は軽症で数週間持続する長引く咳を呈することが殆どです。しかし、軽症であっても、百日咳菌は排出されているので、近隣にいる幼児に病原体を伝播させてしまいます。

百日咳菌は飛沫感染して、ヒトからヒトへと伝播します。気道粘膜に百日咳菌が直接付着して感染します。百日咳菌は乾燥した粘液の中でも最大3日間は生き残ることができるので、それが手に付いて、そのまま鼻粘膜に接触しても感染します。

百日咳の感染力はかなり強力です。百日咳患者が免疫を持たない同居家族に接触した場合の感染率(曝露した人々の中で何人が感染したかを示す割合)は80~90%にものぼるのです。そのため、百日咳の患者は咳が出てから3週間は他の人々に接触しないようにします。しかし、抗菌薬による治療が開始されれば5日経過すれば感染力はなくなるので接触が可能です。学校保健安全法では、百日咳の患者は特有の咳が消失するまで、または5日間の適正な抗菌療法が終了するまで出席停止となっています。