疥癬

疥癬

疥癬というと過去の感染症と思う人もいるかもしれません。しかし、そうではありません。疥癬は現代も高齢者施設や病院を悩ませている感染症なのです。「高齢者施設から紹介されてきた患者に発疹があり、皮膚科に見てもらったら疥癬であった。そのことを紹介元の施設に知らせて、そちらの居住者の皮膚を精査してみると、集団感染が発生していた」などということがあるのです。また、そのような患者が疥癬に罹患していることを知らずに濃厚接触してしまったスタッフに感染することもあります。

疥癬はヒゼンダニ(別名、疥癬虫)による皮膚感染症です。疥癬虫は卵から3〜5日で孵化して幼虫となり、10〜14日で若虫(わかむし)を経て成虫となります。疥癬虫は人体から離れた場合には3日ほどで死滅します。また、体温より低い温度では動きが鈍く、16℃では殆ど動かないことも判っています。

疥癬の潜伏期は、初めて疥癬虫に感染した人は2~6週間(最大2ヶ月間)です。過去に疥癬に罹患したことのある人では曝露後1~4日で皮膚症状がみられます。最も頻度の高い症状は掻痒感と発疹です。これらの症状は疥癬虫の蛋白や糞へのアレルギー反応によるものです。

疥癬には「通常型疥癬」と「角化型疥癬(過去にはノルウェー疥癬と呼ばれていました)」があります。通常型疥癬は手の指間などの発疹であり、そこには数匹~十数匹の疥癬虫が生息しているに過ぎません。そのため、人から人に伝播するには直接かつ長時間の皮膚と皮膚の接触が必要です。一方、角化型疥癬は、高齢者、免疫不全の人、脊髄損傷や麻痺がある人にみられる重症型の疥癬です。角化型疥癬では何万(最大200万匹)という多数の疥癬虫が感染しています。そのため、短時間の軽い接触にても疥癬虫が伝播するのです。感染者が用いたベッド、衣類、家具を介して伝播することもあります。そのため、感染力が極めて強く、集団感染を引き起こすことがあるのです。角化型疥癬の疥癬虫が通常疥癬の疥癬虫よりも病原性が強いということはありません。これは疥癬虫の違いではなく、感染する人の違いなのです。通常免疫の人には通常疥癬がみられ、角化型疥癬は抵抗力の低下している人にみられるのです。

治療については、これまではクロタミトンを全身に毎日塗布する必要がありました。しかし、ノーベル医学・生理学賞に輝いた大村智氏が実用化したイベルメクチンの内服薬の出現によって、疥癬の治療は激変しました。現在はイベルメクチンが疥癬治療の主役となっています。