狂犬病

狂犬病

ときどき、犬に咬まれて病院に受診する人がいます。この場合、必ずといってもいいほど、「狂犬病にはならないか?」「咬んだ犬は狂犬病ワクチンを接種していないかもしれない。大丈夫か?」といった質問をいただきます。やはり、犬に咬まれたときに最初に脳裏に走るのは狂犬病なのでしょう。それは、狂犬病に罹患すると唾液を垂れ流し、周囲の人々を咬むようになり、そして、ほぼ確実に死亡するといったイメージがあるからと思います。

まず、日本国内で犬に咬まれても狂犬病について心配する必要はないことを強調したいと思います。もちろん、破傷風や傷口の細菌感染症の危険性はありますが、狂犬病に罹患することはありません。しかし、海外で犬に咬まれた場合には狂犬病に曝露した危険性がありますので、十分な対応が必要です。

狂犬病は狂犬病ウイルスによって引き起こされている感染症であり、世界で毎年3〜7万人が死亡しています。まず、狂犬病の犬に咬まれると、狂犬病ウイルスが傷口から体内に入り込みます。このウイルスは神経を好む病原体なので、神経線維に到達し、そこから、脊髄に向かって1日5〜10 cmのスピードで移動します。脳脊髄に到達したあとは脳に向かって急速に移動し、脳や脊髄に住み着きます。その後、神経線維を経由して心臓、皮膚、唾液腺などに拡散していきます。ウイルスは唾液腺など神経の多い部分で増殖し、ここからウイルスが排出されます。潜伏期は比較的長く、1〜3ヶ月です。しかし、数日のこともあるし、1年してから発症することもあります。6年以上のこともありました。脳に近い部分を咬まれると進行が早いことが知られています。実際、頭や首を咬まれ、潜伏期が4日であったという報告があります。

潜伏期が終わると、インフルエンザのような症状がみられます。そして、倦怠感、食欲不振、いらつき、微熱、咽頭痛、頭痛、吐き気と嘔吐といった症状が1週間ほど続きます。その後は空気の動きや水にて咽頭の痙攣がみられるようになります。これは2〜7日続きます。そして、昏睡状態となって、2週間以内に死亡するのです。

それでは、狂犬病の蔓延国に行くならばどうしたらよいのでしょうか?それは、狂犬病ワクチンを接種してから出国することです。もちろん、接種したからといって狂犬病に無防備になってはいけません。現地で咬まれたら、迅速に追加のワクチンを接種しなければなりません。ただ、咬んでから10日以上、その犬が元気ならば、狂犬病ではないので心配する必要はありません。ですから、10日後に犬の持ち主に連絡して、犬の状態を確認するようにしましょう。

狂犬病というと、犬に咬まれたときだけ心配する人も多いかと思いますが、そうではありません。コウモリにも気を付けましょう。コウモリに咬まれて狂犬病になった人も数多くいます。アライグマ、スカンク、狐に咬まれても狂犬病に罹患することがあります。