インフルエンザと卵アレルギー

インフルエンザと卵アレルギー

インフルエンザワクチンを接種するとき、最も問題となるのが卵アレルギーです。インフルエンザワクチンのなかに、極微量ですが、卵蛋白が混入しているからです。インフルエンザワクチンを製造するためには大量のウイルスが必要ですが、それを増殖させるために卵を使用しているのです。ウイルスには、生きた細胞に感染して増えるという性質があるため、卵が必要なのです。ワクチンの製造では、まず、卵に注射針が通るくらいの小さな孔を開け、ここからインフルエンザウイルスを注入し、孔をふさいでウイルスを増やします。ウイルスが増殖したら、感染力をなくして、ワクチンを作るのです。1~2個の卵から1人分のワクチンを作ることができます。

このように、ワクチンの中に卵蛋白が微量でも混入しているため、ワクチン接種を希望して病院に受診した人が「昔、卵アレルギーといわれたことがある」とか「卵を食べたら、蕁麻疹ができた」などと申告すると、医師は接種してもよいかの判断に迷うのです。そのような人にワクチンを接種すると卵蛋白が体内に注入されて、ショック状態になるのではと心配になってしまうからです。

それならば、念のために接種を止めておくのでしょうか?そういった対応をすると、数多くの人々が接種できなくなってしまいます。その中には、抵抗力の低下している人とか呼吸器疾患があり、インフルエンザに罹患すると重症化する可能性のある人が含まれます。そのような人にも接種できないことになってしまうのです。もし、今年の接種がなされなければ、来年は、「昨年は卵アレルギーのため、接種しなかった人なので、今年も止めておこう」と判断されます。そして、その次の年も同様です。すなわち、最初に接種しないと判断することとは、以降も接種しないという判断に繋がるのです。

実は、米国では卵アレルギーの既往があっても、インフルエンザワクチンを接種してもよいとの方向性が提示されました。もちろん、過去にインフルエンザワクチンを接種したことによって、重症なアレルギーを経験した人には接種できませんが、過去に卵を食べて重症アレルギーを経験した人には接種しても構わないとしたのです。卵を食べた後に、蕁麻疹のみならず、呼吸困難、意識朦朧、繰り返す嘔吐などを経験した人、救急医療行為を必要とした人にも接種してもよいとしているのです。すなわち、「卵アレルギー」と「インフルエンザワクチンによるアレルギー」とは別物であるという方向性が示されたのです。今後、日本でも同様の対応になってゆくと思われますが、それには数年は必要ではないかと思います。