海外渡航者とワクチン

海外渡航者とワクチン

東南アジア、アフリカ、中南米といった開発途上国に長期滞在しなければならない人々は渡航前にワクチンを接種する必要があります。そのため、渡航外来には毎日のようにワクチン希望者が数多く受診しています。ワクチンによっては数週間~数か月かけて数回接種しなくてはなりません。それにも拘わらず、出張が急に決まって、出国まで十分な日数がない状態で受診する方もいます。企業は職員の安全も考えて、出張までの日数を確保してほしいと思いますが、世界の情勢によって流動的な対応をとらなくてはならないという背景からやむを得ないのかもしれません。ここでは渡航外来で頻繁に接種されているワクチンについて解説します。

狂犬病ワクチンは3回接種が必要です。初回、1カ月後、6カ月後です。しかし、殆どの人は出国の1~2か月前に受診するので、時間がありません。そのため、出国前に2回接種しておき、半年以降に一時帰国したときに3回目を接種します。一時帰国できない人には輸入狂犬病ワクチンを1カ月間に3回接種するという方法もあります。

A型肝炎ワクチンも初回、1カ月後、6カ月後の3回接種が必要です。しかし、出国前の時間が殆どない人には輸入A型肝炎ワクチンを1回接種しておき、1年後に帰国したときに再接種することがあります。A型肝炎はA型肝炎ウイルスで汚染した飲食物を食べることによって感染します。

チフスワクチンは日本には製剤はないので、輸入ワクチンを1回接種します。コレラワクチンも国産製剤はないので、成人では1~6週間間隔で2回内服します。チフスもコレラも病原体で汚染した飲食物を食べることによって感染します。

B型肝炎ワクチンは初回、1カ月後、6カ月後の3回接種が必要ですが、これは渡航の有無に関係なく、すべての人々が接種すべきワクチンです。そのため、出国までに接種するという目標を立てるのではなく、帰国したときも含めて、接種を続けるといった対応をお勧めします。B型肝炎ウイルスは感染者の血液が付着した鋭利物で怪我をすると感染しますが、血液が付着している物品や環境表面に触れることによって、手指の目に見えない程度の傷口から体内に入り込んで感染することもあります。

髄膜炎菌ワクチンはアフリカのサハラ砂漠以南の流行地域に行く人やメッカの巡礼に行く人には必要となります。髄膜炎菌は感染者の咳やくしゃみによって口や鼻から飛び出す飛沫を吸い込むことによって感染します。

パキスタン地域に行く人にはポリオワクチンがお勧めです。パキスタンに4週間以上滞在すると、同国を出国する渡航者に対して、出国時に1年以内に接種したポリオワクチンの接種証明書の提示を、パキスタン政府より求められることがあるからです。ポリオは感染者の糞便で汚染した食べ物を食べたり、汚染した物品に触れた手が口に入ったりして感染します。