不明熱

不明熱

「不明熱」という病名を聞いたことはありますか?発熱の原因が不明である疾患という意味なのですが、決して思いつきの病名ではなく、医学的に正式な病名なのです。不明熱の定義は「38.3℃以上の発熱がある」「発熱の持続期間は少なくとも3週間である」「1週間の集中的な診断的検査にもかかわらず原因が診断できない」というものです。

病院では「不明熱」と診断して放置しておくことはありません。発熱の原因として何らかの疾患を疑って、精査します。その場合、特に「感染症」「膠原病」「悪性疾患」について精査してゆきます。感染症では結核と膿瘍の有無に重点を置いて検査しますが、感染性心内膜炎という心臓の弁に細菌の塊ができる感染症のこともあります。膠原病というのは、自分の免疫で自分の組織を破壊してしまう病気のことですが、特に成人スチル病(継続する発熱、関節痛、発疹、咽頭痛、リンパ節腫大などの症状がある原因不明の病気)や側頭動脈炎(50歳以上にみられる側頭部の動脈の炎症)などについて精査します。もちろん、その他の膠原病のこともあります。悪性疾患としては悪性リンパ腫、白血病、腎細胞がん、肝細胞がん、その他のがんの肝臓転移などを精査します。これらの疾患かどうかを徹底的に精査するのですが、それでも原因が不明な場合もあります。このような場合、本当に困ってしまいます。

このような原因不明の発熱が続いていることから、何か急に病気が悪化して重症になってしまうのではないかと心配される人も多いかと思います。実は、徹底的な評価にもかかわらず診断できなかった不明熱の患者の殆どは予後が良好なのです。徹底的な精査のなかで、生命を脅かすような重篤な疾患の殆どが除外されていることから、当然のことかもしれません。

ときどき、微熱が何週間も続くということで病院に受診する人がいます。その殆どが、日中の活動による正常範囲の体温を発熱と思い込んでの受診です。通常、元気な人は体温を測定することはありません。そのため、自分の平熱を知らないことが殆どです。しかし、病院に微熱が続くということで受診する人の多くは「私の平熱は○○度ですが、現在は37.3℃もあり、それが続いているので精査してほしい」などと訴えます。このような場合、2週間程体温を自宅で測定して記録してもらいます。そうすると、殆どの場合、発熱がみられないことが確認され、安心して帰宅していただいています。