急性喉頭蓋炎

急性喉頭蓋炎

とても怖い感染症があります。昨日まで元気だったのに、突然、発熱し、喉がとても痛くなり、呼吸が苦しくなり、そして、数時間後に窒息死してしまう病気があるのです。それは「急性喉頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん)」といい、救急外来で最も恐れられている感染症の1つです。

急性喉頭蓋炎は小児に多くみられる感染症です。特に、2~4歳で多くみられます。原因菌はインフルエンザ菌が殆どです。この細菌をインフルエンザウイルスと間違えないようにしてください。インフルエンザウイルスはインフルエンザを引き起こすウイルスです。一方、インフルエンザ菌は細菌であり、インフルエンザには関係ありません。そのため、毎年、10~11月頃に接種されるインフルエンザワクチンやインフルエンザの治療に用いるタミフルのような抗インフルエンザ薬は急性喉頭蓋炎の治療や予防には効果はないのです。急性喉頭蓋炎には細菌感染症の治療に用いる抗菌薬を使用します。そして、インフルエンザ菌(インフルエンザウイルスではありません)に対するワクチンを接種することによって予防するのです。

急性喉頭蓋炎では咽頭痛があまりにも激しいので、唾液を飲み込むことができず、口から垂れ流すという状態で受診することがあります。気道の空気の通りを確保するために、首を前に突き出すような姿勢をとっていることもあります。それでも、呼吸困難になり、息を吸う時にはゼーゼーと呼吸します。そして、チアノーゼ(血液中の酸素が不足して、皮膚と粘膜が青白くなっている状態)や昏睡状態となり、気道が閉塞して窒息死してしまうのです。

このように呼吸ができなくなる理由は喉頭蓋という部分が腫れあがっているからです。喉頭蓋は声を出す器官である声門の上の部分です。ここにインフルエンザ菌が感染して、炎症を起こし、腫れてしまうのです。急性喉頭蓋炎の恐ろしいところは、あらゆる刺激が気道の閉塞を引き起こす可能性があるということです。診察室で咽頭や扁桃をみるために舌圧子で舌を抑えることがあるのですが、それによって窒息が誘発されることもあるのです。そのため、呼吸できないほどの症状であれば、挿管(呼吸する管を気管まで挿入すること)や気管切開(頸部前部を切開して、呼吸する管を気道に直接挿入すること)する準備をしてから診療します。治療は入院して、抗菌薬の点滴を7~10日継続します。このとき喉頭蓋の浮腫が強ければ、3~4日ほどは人工呼吸で管理します。