母乳

母乳

母乳は新生児や乳児にとって、なくてはならない栄養形態です。母乳の利点は数知れず、中耳炎、感冒、RSウイルス感染症などの感染症の予防、気管支喘息やアトピー性皮膚炎の発症の減少、糖尿病や白血病の危険性の減少、乳幼児突然死症候群の予防といった様々な効果があります。更に、母乳には善玉菌が多く含まれており、それを飲むことによって、乳児の腸管の正常細菌叢の確立につながります。このような母乳の利点があるので、安易な理由で「母乳を中止しましょう」と判断することは適切ではありません。例えば、母親がインフルエンザに罹患したので、授乳によって乳児にウイルスを感染させてはいけないから、母乳を中止するといった行為です。母乳からインフルエンザウイルスが乳児に伝播することはありません。そのため、授乳しても構わないのです。但し、母親は授乳中はマスクを装着して、手洗いをします。また、ウイルスで汚染した乳房はインフルエンザの感染源になりうるので、石鹸などで乳房を拭き取ります。そして、母親がマスクを装着し、手洗いを済ませるまでは乳房はガーゼで覆っておきます。このように母親がインフルエンザであっても何とかして母乳を与えるのです。

母親がB型肝炎ウイルスの保菌者の場合でも母乳を中止してはいけません。このような場合には乳児にはB型肝炎ワクチンが接種されますが、ワクチンによって免疫が獲得されたのを確認するまで、授乳を遅らせる必要はないのです。HBVワクチンが利用できるようになる前でさえも、授乳によって乳児がB型肝炎ウイルスに感染したということはなかったからです。もちろん、授乳しているすべての母親は乳首が裂けたり出血したりしないように適切にケアする必要はあります。母親がC型肝炎ウイルスに感染していても母乳は中止してはいけません。母乳がC型肝炎ウイルスを伝播させるという根拠はないからです。ただし、乳首が裂けていたり、出血しているときには、一時的に授乳を止めることはあります。母親がHIVに感染している場合については、母乳を介する母子感染を防ぐために母乳を与えてはいけません。

母乳はできる限り、乳児や新生児に与えるようにしますが、母乳の搾乳や保存は適切に実施しなければなりません。まず、搾乳する前と母乳を取り扱つかう前には手洗いをします。そして、母乳はキャップ付きの清潔な容器にいれて、しっかりとキャップをしめます。母乳の保存時間は室温では6~8時間です。断熱クーラーバッグでは24時間まで、冷蔵庫では5日です。冷凍すれば2週間まで保存できます。保存容器の凍結母乳に新鮮な母乳を加えてはいけません。また、同じ容器の母乳を複数回使用することも避けます。凍結した母乳を解凍するために電子レンジは使用しません。電子レンジは母乳を均等に加熱できないからです。また、一度解凍した母乳を再度凍結することは避けます。