他人の血液の曝露

他人の血液の曝露

ときどき、「ゴミ出しに行って、ゴミの集積所で他のゴミ袋を移動しようとしたら、針が袋から飛び出していて、指をさしてしまった。どうやら糖尿の治療で用いるインスリン注射の針と思われる。どうしたらよいか?」「交通事故で人を救助したけれど、血液が手指にべっとりと付着してしまった。あとから聞いたところ、事故にあった人は肝炎ウイルスに感染していたとのこと。どうしたらよいか?」などと相談を受けることがあります。このようなことを病院では「針刺し」とか「血液・体液曝露」といっています。病院では血液採取などで注射器を頻繁に使用することから、このような事態を頻繁に経験しており、対応については慣れています。

他人の血液が付着した針で指を刺したり、他人の血液が自分の体に付着した場合に考えなければならない病原体は「B型肝炎ウイルス」「C型肝炎ウイルス」「ヒト免疫不全ウイルス」の3つです。このなかで最も感染力の強いのはB型肝炎ウイルスです。これについては十分な対応が必要となります。C型肝炎ウイルスやヒト免疫不全ウイルスについてはB型肝炎ウイルスほどの感染力はありませんが、やはり気をつけなければなりません。

B型肝炎ウイルスは環境表面にて1週間生存しています。そして、そのような環境表面に触れた手指の小さな傷口などから体内に侵入することができます。例えば、公衆トイレや飛行機内のトイレの便座に他の人の痔出血や生理の血液が小さく付着していたとしましょう。そのまま便座に座ると殿部の小さな傷からウイルスが体内に侵入してしまいます。このようなことを避けるために日常からB型肝炎ワクチンを接種することをお勧めします。最近は子どもへの定期接種が始まっていますが、成人にはそのようなチャンスはありませんので、自分から病院に接種を依頼するとよいでしょう。ただし、保険は使用できないので、自費となります。

C型肝炎ウイルスについては、経過観察のみとなります。ヒト免疫不全ウイルスについては明らかな感染者で治療が不十分な人の血液に曝露した場合には抗ウイルス薬の内服は必要となりますが、そのような事態は日常生活では、まず、遭遇しないでしょう。

ゴミ収集所でのインスリン針による針刺しといった状況があれば病院や保健所に相談するとよいと思います。ただし、保険診療できるかどうかは相談しなければなりません。肝炎やエイズになってしまった場合には健康保険が使用できますが、針刺しの場合、感染症を発症している訳ではなく、予防が目的の対応であることから、必ずしも保険が利用できない可能性があることを了解しておく必要があります。